リフレッシュエアを求めて 山へ、イオニアとともに。
ソロ登山者が増えたかな……。
山を歩きながら、そんなことを考えた。
山を登る多くがソロのようだった。
そういう僕も一人で歩いている。
初夏の山は本当に美しい。
長い冬から目覚めた植物が春に芽生え、初夏に生命を輝かせている。
本当なら、友人たちと連れだって日本アルプス縦走を楽しみたいところだけど、ニューノーマルの今、高所登山で怪我や遭難をするわけにはいけない。
家に閉じこもってばかりいては体力も気分も落ち、自然の抵抗力まで落ちてしまう。
今日の日程は一人で一泊のテント泊。
これなら、いろんなリスクも最小限に抑えられる。
一泊の登山といえども、標高は2000メートルを超える。
一歩一歩ゆっくりと登っていく。
夕方前、キャンプ場に到着した。
すでに、先客がテントを張っている。
「お疲れ様です」
と、初老の男性に話しかけられた。
「久しぶりの山歩きで、けっこうきつかったです」
と、僕が笑うと
「カップがあれば、コーヒーでもどうです?」
と言ってくれた。
ありがたい。
カップを差し出し、コーヒーを注いでもらった。
豆から入れた本格的なコーヒーだった。
「おいしいです」
「そりゃあ、よかった」
ふと、男性の首にかけたイオニアカードが見えた。
「あ、私も使っています。イオニアカード」
と、カードを見せた。
「奇遇ですね。私は妻に渡されまして」
と男性は笑う。
ソロ登山だし、テント泊なので人と話すことはないと思ったが、今夜はこの男性といろいろ話ができそうだ。
イオニアカードを持っている人だ。
きっと、普段から空気環境には気を遣っていることだろう。
「テントを横に張らせてもらっていいですか?」
「ええ、落ちついたらまた一杯やりましょう」
一杯というのは、コーヒーなのか、お酒なのか。
どっちなんだろうと思いながら、僕はテントを張った。
今夜は楽しい夜になりそうだ。そんな予感がした。