走るときも、休むときも。
ランニングが日常になった。
40代に入り、ふと体力が落ちていることに気がついた。
運動するかな……。
とりあえず、ランニングシューズを買いに行くことにした。
僕は見かけから入るのだ。
速く走れるランニングシューズを見ていると、店員さんが「こちらはいかがでしょう」とものすごくオーソドックスなシューズを勧めてくれた。
……ですよね。
今やるべきは、正しいフォームで走り、持久力を付けることだ。速く走れるシューズを買うのは先の話だ。
その日以来、毎日走るようになった。
はじめは近所のコンビニまでも走ることができなかった。
少しずつ距離を伸ばし、ゆっくりゆっくり走った。
ランニング仲間もできた。近所の公園で休憩しているときに、ひとことふたこと交わしたり、時折併走したりするくらい。
名前も知らないけれど、同じ志というのが体型から見て取れた。
同世代は身体の悩みが多いんだな……。
あるとき、その人の腕に白いリストバンドを見つけた。
休憩中、そのバンドについて聞いてみた。
お互い息切れしていた。
「それはなんのリストバンドですか?(ハアハア)」
「ああ、(ハアハア)これはイオニアバンドですよ」
「(ハアハア)イオ、ニア?」
腕につける空気清浄器ということだった。
ランニング中はマスクをしているし、野外で休憩時くらいはマスクを取りたい。
こういう時にイオニアバンドがあると、自分だけではなく相手に対しても心遣いになるな……。
「では、また!」
と名前を知らないイオニアバンドの人は走って行った。
僕も「では!」と逆方向に走っていく。
速く走ることのできるシューズも格好いいけれど、相手を気遣う気持ちも格好いいな。
僕はいつもより速く走って家に帰った。
家に帰ったら僕もイオニアバンドとやらを買ってみよう。