空気清浄の“ブースター” 24時間イオン発生
今日は生まれて初めてのバスケ観戦。
ただ、バスケといえば体育の授業でやった程度。
正直言って興味はない。
彼女に誘われなかったら、いくら人気沸騰中とはいえ、プロバスケットのゲームを見ることはなかっただろうな。
アリーナに到着するとただならぬ興奮状態を感じた。
普段はおとなしい彼女も、なんだかいつもと違う感じだ。
チームカラーのユニフォームを着て、手にはハリセンを持っている。
……なんでハリセンなんだ。
今は新型コロナの影響でアリーナ内では声援は禁止されている。
だからハンドクラップかハリセンを打ち鳴らして応援するのだそうだ。
「あ、あとこれ」と首になにかをかけられた。
「なに?」
「イオニアカード。知らない?」
知らないというと、彼女はカードのことを教えてくれた。
どうやら、空気のトラブル対策として使用するらしい。
たしかに、アリーナは空気の入れ換えをしているし、観客同士の席も離れていて密を避けている。
それでも用心に越したことは無い。不思議とすごく安心した気分になった。
声援がダメなんだから、ゲーム中は静かなのかなと思っていたら、とんでもなかった。
ゲームが始まると、DJが観客を盛り上げ、観客もハリセンやハンドクラップで選手たちを鼓舞する。
ア
リーナに一体感が生まれた。
そしてびっくりするくらいファンのマナーが良かった。
誰も大声を出さない。
チアのパフォーマンスをハーフタイム中に見ながら
「すごいね、バスケのファンはマナーがいいね」
と彼女に言うと、
「バスケを応援する人たちをブースターって言うの」
と教えてくれた。
「へえ、ブースターか」。
後押しや後援者という意味だ。
格好いい呼び方だな。
なるほどな。バスケファンは「僕は君のブースターになるよ」とか言うのだろうか。
絶対、何人かは言ってるな。
無意識のうちにニヤついていたら、チアリーディングを見てニヤニヤしていると思われて、彼女から軽い肘鉄を食らった。
……さあ、ゲームがはじまる。
あっという間に、僕は静かな応援の渦に包まれていった。